都心の屋上で秋まき野菜を収穫

最近、食の安全性に対する疑問から、自分たちが食べる野菜を自ら育てようと、家庭菜園に関心を寄せる方々が増えているようです。ただ都市部では、じゅうぶんな広さの庭が確保できない、庭はあっても建物に囲まれていて環境がよくないなどの問題があります。そこで発想を変えて、照り返しの酷い屋上や吹きさらしのベランダを、陽当たりと風通しが良い菜園に変えることで、収穫の喜びを味わうことができます。

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上の写真は、都心のビルの屋上で今年の10月4日に野菜のタネまきをした様子です。土は、屋上用に開発された軽い培養土に、赤玉土とたい肥を混ぜたものです。赤玉土には強い風で苗が根こそぎ抜けないよう、適度の重さをもたせる役目が、たい肥には野菜を元気に育てるため、土の中の善玉の微生物を殖やす役目があります。

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タネまきしてから11日目、10月15日の状態です。生長にしたがって混んでいる芽を間引きながら育てます。抜いた芽は、ベビーリーフとしてサラダなどに使えます。もちろん無農薬なので、間引いた苗をそのまま口に入れても問題ありません。小さなビニルハウスのような覆いは、農業用の不織布を使っています。日光と風は通しますが、飛んでくる害虫は通さないので、殺虫剤を全く使用しないで育てられます。普段は閉めておき、水やりや世話のときだけ開くようにします。

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同じく25日目、10月29日の状態です。30本以上発芽した苗ですが、間引きを繰り返して5株まで減らしました。株がここまで大きくなれば、葉を多少害虫に囓られても生長に影響はないのと、冷え込む日も出てくると虫の活動も鈍くなるので、タネまきしてからずっと覆っていた虫除けの不織布を取り除きました。

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同じく48日目、11月21日の状態です。いちばん手前に植えたカブは、もう収穫の適期になりました。地面から切り離された屋上なので、株の根元を囓る害虫が入り込むこともなく、きれいな肌をした丸い形です。大きさは、テニスボールをひとまわり小さくしたくらいです。

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収穫したカブは、英国の種苗会社から取り寄せた「オアシス」という品種です。カタログには「メロンの風味がある」と書いてありましたが…甘味が強く、葉も柔らかくて瑞々しく、生でまるごと食べられるほどでした。となりは、一緒に収穫した「わさび菜」というカラシナの栽培品種で、葉に細かく切れ込みが入ります。このように、お店では手に入らない珍しい種類の野菜を、穫ったその場で味わうことができるのも家庭菜園ならではの愉しみのひとつです。

屋上やベランダに菜園を作るときの条件は、まず床が水を含んだ培養土の重さに耐えられる構造になっていること、つぎに建物の防水処理が適切に施されていること、そして水道の蛇口があることです。地面から切り離された高い場所で野菜を栽培するので、培養土の配合や、野菜の種類選びだけでなく、毎日の世話にも気配りは必要ですが、専門家と相談しながら希望に近い菜園を作ることができます。