屋上やテラスで、プランターの中でもすくすく育つ野菜たち(ベランダ菜園で問題になる土の処理ですが、一度も土を処分せず、堆肥、有機肥料を使って土壌改良を繰り返し行い、元の土を利用しています。)
野菜とハーブが自然に住み分けをして花もよく咲いています。
月別アーカイブ: 2014年9月
震災後の庭
暑い日が続いておりますが、皆さまお変わりないでしょうか?
さて、今年は震災・原発事故、と異常事態の中でどう生きていくか、ということが
試されているような日々ですが、お庭での作業を気にされている方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
つい先日の高濃度の放射性物質が腐葉土から検出された、というニュースは
ある程度予想はできることであっても、我々にとってもショッキングなものでした。
今年はお庭の手入れをさせていただいていても、例年と比べると異常な程
沢山の花を咲かせる木が多くあり、実を今までほとんど付けたことなかった木にまで
実がなるという現象も見られました。
木はよく弱ると次の世代へつなげるため、花を多く咲かせる、といいますが、
それらの木自体が弱っている訳ではないところを見ると、木は何かしら
異常事態を察しているのではないか?と思ってしまいます。
私たちも庭を造り、緑を自分の好きなように配置させてあたかも人間が主となった
見方をしてしまいがちですが、きっと植物は人間より遥かに敏感で、
自然の中で生き抜く知恵を持っているのだと思います。
放射性物質に関してはチェックがされている肥料や腐葉土を買う、というのも
一つの手でありますが、よほど弱ったり、土が劣化している訳でなければ、
今年は特にそういうものを使わなくてもいいと思います。
地植えの場合は特に、木や草花は環境に合っていれば、適量のお水さえ
やっていれば過保護にしなくてもすくすくと育ってくれますし、
逆に過保護にしなければ維持できない草木は、別の場所に移して欲しい、
もしくはもっと環境に合ったものと変えて欲しい、というメッセージを発してくれるはずです。
今年は決して無理をなさらず、ストレスをためずに植物に愛情を注げる庭や
ライフスタイルに合った庭仕事の形を探るチャンスにしていただければ、と思います。
ミツバチも頑張っています!
施主のかたの環境の変化ともに歳月をかけて作り続けていく庭
はじまりは、8年も前に遡ります。横浜市の閑静な住宅地にある、和風の庭を洋風に変えたい、というご依頼でした。
道路に面した駐車場わきの通路から階段を上ると、和風の庭がありました。生垣はキンモクセイです。庭は南に面していますが、生垣が高いので日陰の多い庭でした。おしゃれなリビングから見える、ツツジが茂った和風の庭の雰囲気がしっくりこないのが気になり、思い切ってリフォームしたい、ということでした。約40㎡くらいの広さです。
◇施工前の様子
奥様は、庭のツゲやツツジをお好きではありませんでしたが、ご主人はせっかく育っているのだから…と、それらを全部伐採してしまうことには難色を示されていました。事情があって、南側の庭全部を一度に作りかえることはできないため、最初はリビング前の庭の半分を洋風に変えて、その後、残りの部分も変えていくということになりました。
まず、ご主人の意向を汲んで、洋風になじまない刈り込み仕立てのツゲを、庭の作り直さない部分に移植して残すことにしました。リビング前の狭いテラスを、思い切ってレンガ造りの広いテラスに作り変え、同じレンガで花壇と小道を作り統一感を出しました。生垣を低くしても日当たりはそれほど改善されないので、花壇を高く作って日当りを少しでもよくすることにしました。
◇庭の半分をリフォームした後、テラスから花壇方向を望む
その後、子供さんたちの結婚や受験があり、しばらくは大がかりなリフォームはお休みし、庭の手入れが中心になりました。その間も環境に合わない植物は消え、別の植物を植えたり、土壌改良をしたりと、小さな改造は続いていました。
最初に植えてから4、5年たち、ジューンベリーやシデが、すくすくと枝を伸ばし成長してきました。これらの雑木がのびのび育って明るい林のような雰囲気になってくると、移植した仕立物のツゲが庭の雰囲気と合わなくなってきました。このツゲは、かなり衰弱して一部の枝が枯れかけていたので、ご主人も処分に納得され、思い切って抜根することにしました。
これをきっかけに、庭の残った部分のリフォームを再開することになりました。既存のレンガのテラスを延長し、ツゲの代わりに小さなコハウチワカエデを植え、庭に無造作に置かれていた沓脱石を株元に据えました。下草もウラハグサ(フウチソウ)のみに整理して、すっきりさせました。
◇ウラハグサの脇から覗く沓脱石と、延長したレンガのテラス
庭全体のリフォームが一通り終わったところで、そろそろお庭作りも終わりかな、と思っていたところ、新たなご相談を受けました。庭が思い通りの雰囲気になり、広くなったテラスも大いに利用されているとのことでしたが、駐車場に面しているキンモクセイの生垣が和風で気になるので、リフォームした庭に合ったものに変えたい、というご要望でした。
駐車場横だけでなく、庭全体がキンモクセイの生垣だったので、全部を植え替えるということは大工事になります。そこで、2種類の提案をしました。
①駐車場の横のみ、暑さに強く刈り込みにも耐える針葉樹レイランドヒノキを
植え、グレイに塗装したトレリスを作る
②費用はかかるけれど、オリジナルのアイアンのフェンスと小さなドアを作り、
アイアンのフェンスにツル植物を絡ませる
ご検討の結果②案にまとまり、アイアン作家の青田さんに希望のイメージを伝え、オリジナルのフェンスとドアを制作しました。
仕上げに、庭のあちこちに植えていた様々な下草を片づけて、一面に西洋芝のタネをまきました。こちらの日陰の多い庭でも育つように、専門家に依頼して数種類のタネをブレンドしたものなので、木の根元まで芝が生えて自然な感じです。夏のような勢いはありませんが、冬も枯れないので一年中緑の芝生を楽しめます。
◇陽が射さないシデの株元まで入り込む西洋芝
こうして8年かけて、少しずつ環境の変化にあった庭を作り続けることができました。施主のご夫婦が、今ではお孫さんも交えて、本当に気持ちよく過ごされているご様子をうかがうのは嬉しい限りです。
◇駐車場脇に設置した特注のアイアンフェンスとドア
◇庭の入口から内部を望む