【土の話】 ピートモスについて

緯度や高度が高い場所にある湿地に生える苔や草が枯れて、温度が低いために腐らず、何千年、何万年をかけて積もったものをピート(泥炭)と呼びます。むかし、北欧やスコットランドなどでは、このピートを掘り出して乾かしたものを燃料として使っていました。

このピートの塊を、農業用、園芸用の土壌改良材に利用するために乾かしてから砕き、中の枯れ枝などを取り除いたものを「ピートモス(peat moss)」と呼びます。カナダ、北欧、樺太あたりが大きな産地です。最近は、中国奥地の高原地帯で採れたものが、日本に入ってきています。土に混ぜると軽くなり、一時的に通気性と保水性が良くなるため、栽培期間が短い苗物の生産や、家庭園芸の培養土によく使われています。

しかし、もともと枯れた植物の残骸が、温度が低い場所にあったために腐らずに残ったものなので、気温が高い日本などで使うと、それまでの遅れを取り戻すように1年程度で分解してしまいます。屋上など、特に夏の温度が高くなる場所では、異臭を放つベチャベチャした粘土のような状態になってしまうこともあります。こうなると、植物は育ちません。

このようにピートモスは、栽培期間が短い鉢物や、ハンギングバスケットの培養土のように軽くて保水性の良さが求められる場合には、とても良い土壌改良材になりますが、何年も土を入れ替えずに栽培する大きなコンテナ、屋上緑化や庭木の土に利用する場合は、気を付けましょう。

◆屋上緑化の芝生に使われたピートモスが主成分の培養土
植え付けてから1年程度の状態。腐った臭いがして、排水性が悪くなって踏むと水が滲み出てきます。こうなると芝生も枯れてしまいます。

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◆ピートモスを含まない培養土を使った屋上の芝生とコンテナ菜園
植物の種類や植える場所に合った培養土を使えば、植物は何年も元気に育つので、土を取り替える必要もありません。

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