庭作りは辛抱の末の喜び?

すっかり落ち着いて、なんともいえない風情を漂わせている庭で過ごすのは気持ちのいいものです。そんな庭が我が家にもあればなおさらのことです。

横浜市の閑静な住宅地にお住まいの施主のかたが、以前のお宅を建て替え、和風モダンの住宅を新築されました。庭の部分は、平成14年の冬から打ち合わせをスタートして、現在も樹木の手入れや植物の入れ替え、新たな工事などで長くお付き合いいただいています。

建て替え前の庭にあった樹木は、20年以上経て老化しているものも多く、ヒメシャラ2本とアセビのみを残すことにしました。住宅の建築工事をしたときに出た土が、そのまま小山のように残されていましたが、処分すると経費がかなりかかってしまいます。そこで、奥行き3m足らずの細長い南側の庭に土を盛って、建物に向かった斜面をつくり、高低差のある変化に富んだ空間にしました。
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画像① 建物南側の庭に作った斜面 東側から西側を望む

ヒメシャラは、その斜面に前から生えていたように、それらしい場所を選んで移植しています。
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画像② ヒメシャラなどの自然風植栽 西側から東側を望む

また、玄関から入ると目の前に大きな窓があり、庭の風景を切り取って見ることができる、ピクチャ・ウィンドウとなっています。その風景作りに、古木で変化に富んだ樹形のアセビを配しました。
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画像③ 玄関正面のピクチャ・ウィンドウから見えるアセビ

以上の3枚の画像を見ても判るように、庭が完成したばかりの頃は、まだまだ寂しい感じでした。その後、植物の生長に従い、良いと思った場所に植えたものでも、消えてしまうものがあったり、施主の方の新たなご希望を取り入れたり…と少しずつ少しずつ改良してきました。庭をつくったときには充分対処できると考えていた水はけが予想外に悪く、土の中に暗渠排水管を埋めたりもしました。その部分には、つくば石のゴロタを自然な形で敷いて川の流れのようにしました。必然が生んだ新たな景色です。

そして冬を越え、春が過ぎて初夏の頃には緑たっぷりの庭になってきました。
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画像④ 画像①のその後 建物南側の庭 東側から西側を望む

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画像⑤ 画像②のその後 西側から東側を望む

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画像⑥ 画像③のその後 玄関正面のピクチャ・ウィンドウ
最近の気候の変化で、虫が大発生したり、普通なら葉焼けしない樹木が葉やけして汚くなったり、実がつかなかったり、逆に異常に殖える植物があったり、いろいろなことが起こります。それに一つずつ対処していると、もどかしいこともあると思うのですが、施主のかたはハプニングにも根気よくお付き合いくださいます。この庭を愛して、できることは小まめにしてくださるので、心地よい空間が保たれているのだと思います。庭は作ったその日から、辛抱と根気が求められるものなのかもしれません。それだけに上手くいくと喜びもひとしおです。