カテゴリー別アーカイブ: 施工事例

施主のかたの環境の変化ともに歳月をかけて作り続けていく庭

はじまりは、8年も前に遡ります。横浜市の閑静な住宅地にある、和風の庭を洋風に変えたい、というご依頼でした。

道路に面した駐車場わきの通路から階段を上ると、和風の庭がありました。生垣はキンモクセイです。庭は南に面していますが、生垣が高いので日陰の多い庭でした。おしゃれなリビングから見える、ツツジが茂った和風の庭の雰囲気がしっくりこないのが気になり、思い切ってリフォームしたい、ということでした。約40㎡くらいの広さです。
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◇施工前の様子

奥様は、庭のツゲやツツジをお好きではありませんでしたが、ご主人はせっかく育っているのだから…と、それらを全部伐採してしまうことには難色を示されていました。事情があって、南側の庭全部を一度に作りかえることはできないため、最初はリビング前の庭の半分を洋風に変えて、その後、残りの部分も変えていくということになりました。

まず、ご主人の意向を汲んで、洋風になじまない刈り込み仕立てのツゲを、庭の作り直さない部分に移植して残すことにしました。リビング前の狭いテラスを、思い切ってレンガ造りの広いテラスに作り変え、同じレンガで花壇と小道を作り統一感を出しました。生垣を低くしても日当たりはそれほど改善されないので、花壇を高く作って日当りを少しでもよくすることにしました。
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◇庭の半分をリフォームした後、テラスから花壇方向を望む

その後、子供さんたちの結婚や受験があり、しばらくは大がかりなリフォームはお休みし、庭の手入れが中心になりました。その間も環境に合わない植物は消え、別の植物を植えたり、土壌改良をしたりと、小さな改造は続いていました。

最初に植えてから4、5年たち、ジューンベリーやシデが、すくすくと枝を伸ばし成長してきました。これらの雑木がのびのび育って明るい林のような雰囲気になってくると、移植した仕立物のツゲが庭の雰囲気と合わなくなってきました。このツゲは、かなり衰弱して一部の枝が枯れかけていたので、ご主人も処分に納得され、思い切って抜根することにしました。

これをきっかけに、庭の残った部分のリフォームを再開することになりました。既存のレンガのテラスを延長し、ツゲの代わりに小さなコハウチワカエデを植え、庭に無造作に置かれていた沓脱石を株元に据えました。下草もウラハグサ(フウチソウ)のみに整理して、すっきりさせました。
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◇ウラハグサの脇から覗く沓脱石と、延長したレンガのテラス

庭全体のリフォームが一通り終わったところで、そろそろお庭作りも終わりかな、と思っていたところ、新たなご相談を受けました。庭が思い通りの雰囲気になり、広くなったテラスも大いに利用されているとのことでしたが、駐車場に面しているキンモクセイの生垣が和風で気になるので、リフォームした庭に合ったものに変えたい、というご要望でした。

駐車場横だけでなく、庭全体がキンモクセイの生垣だったので、全部を植え替えるということは大工事になります。そこで、2種類の提案をしました。

 ①駐車場の横のみ、暑さに強く刈り込みにも耐える針葉樹レイランドヒノキを
  植え、グレイに塗装したトレリスを作る

 ②費用はかかるけれど、オリジナルのアイアンのフェンスと小さなドアを作り、
  アイアンのフェンスにツル植物を絡ませる

ご検討の結果②案にまとまり、アイアン作家の青田さんに希望のイメージを伝え、オリジナルのフェンスとドアを制作しました。

仕上げに、庭のあちこちに植えていた様々な下草を片づけて、一面に西洋芝のタネをまきました。こちらの日陰の多い庭でも育つように、専門家に依頼して数種類のタネをブレンドしたものなので、木の根元まで芝が生えて自然な感じです。夏のような勢いはありませんが、冬も枯れないので一年中緑の芝生を楽しめます。
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 ◇陽が射さないシデの株元まで入り込む西洋芝

こうして8年かけて、少しずつ環境の変化にあった庭を作り続けることができました。施主のご夫婦が、今ではお孫さんも交えて、本当に気持ちよく過ごされているご様子をうかがうのは嬉しい限りです。
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◇駐車場脇に設置した特注のアイアンフェンスとドア

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◇テラス側からアイアンドアを望む
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◇庭の入口から内部を望む

簡単に楽しめる屋上のコンテナ菜園

去年は、かなり大型のコンテナで、比較的大きく育つカブや菜っ葉の仲間を作りました(その様子はここをクリック!)。今年は、スペースが限られている場所にも簡単に設置できる、比較的小さなコンテナを用意してラディッシュを作りました。コンテナのサイズは、幅100cm×奥行き40cm×高さ50cmです。培養土は、赤玉土、鹿沼土、腐葉土、たい肥などを混合して、保水性と通気性に配慮しました。
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■金属メッシュ素材を使った菜園コンテナ。10cm刻みで、サイズを調整できます。

関東以西の太平洋側の平地は比較的暖かいので、種類を選べば秋からでも野菜を栽培して楽しめます。中でもラディッシュは、寒さに強くて生長が早く、あまり手間を掛けずに栽培できるので、初心者でも収穫が楽しめる比較的失敗が少ない野菜です。写真は10月10日にタネをまいて、9日後の10月19日の様子です。
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■芽が出揃ったラディッシュの苗。

白い薄布は、ポリエチレン製の細い繊維をシート状に絡ませた「不織布」です。光の90%を通しながら、ラディッシュの葉に卵を産み付けるガが飛び込んでくるのを防ぐことができます。さらに、通気性を確保しながら、強い風を遮ることができるので、吹きさらしの屋上には便利な資材です。自在に曲がる骨を立ててトンネル状にして使いました。
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■屋上は地面を這ってくる害虫がいないので、風でめくれないよう簡単な押さえをするだけで、無農薬栽培ができます。

芽が出揃ったところで、ふたばが傷ついたものや、形がいびつなものを間引きます。この後も、混み合い具合を見ながら間引いて、本葉が2~3枚になる頃に1本にします。不織布を使うと、収穫するまでに必要な作業は、水やりと間引きだけです。間引いた苗は、もちろん食べられます。
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■最初は、キズついたりや形が崩れた苗だけを間引きます。その後、生長にしたがって間引いて、一か所に1本にします。

タネをまいてから1か月経った、11月10日の様子です。
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■ラディッシュも、収穫が近くなると葉が大きくなるので、混み合わないように株間は10~15cm必要です。

根元を見ると、じゅうぶんに太って収穫適期になっています。このまま置いておけばまだ太りますが、肌がひび割れて硬くなったり、中に「ス」が入ったりするので、遅れないように収穫しましょう。
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■生鮮野菜では入手できない品種を揃えました。左から、パープル・スター、ゴールド・スター、レッド・ヘッド

今回もタネでしか入手できない、色や形が変わっ珍しい品種を作ってみました。穫りたてはもちろん、入手が難しい種類を作れるのも自家菜園ならではの楽しみです。
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■上下で紅白になる、丸いレッドヘッド。ラディッシュは丸いという先入観を崩す、細長いロング・スカーレット。

収穫後は、有機肥料を軽く一握りまいてよく培養土と混ぜ、10日程度休ませればもういちどラディッシュを栽培できます。12月から2月頃は気温が低くなりますが、不織布のトンネルが、急な冷え込みや乾燥した冷たい風からラディッシュを護ってくれます。寒くなるので、ラディッシュの成長も遅くなって収穫まで2か月くらいかかりますが、じっくり育って甘味が強くなります。その後、春からはトマトやシシトウなどの夏野菜を育てます。

庭作りは辛抱の末の喜び?

すっかり落ち着いて、なんともいえない風情を漂わせている庭で過ごすのは気持ちのいいものです。そんな庭が我が家にもあればなおさらのことです。

横浜市の閑静な住宅地にお住まいの施主のかたが、以前のお宅を建て替え、和風モダンの住宅を新築されました。庭の部分は、平成14年の冬から打ち合わせをスタートして、現在も樹木の手入れや植物の入れ替え、新たな工事などで長くお付き合いいただいています。

建て替え前の庭にあった樹木は、20年以上経て老化しているものも多く、ヒメシャラ2本とアセビのみを残すことにしました。住宅の建築工事をしたときに出た土が、そのまま小山のように残されていましたが、処分すると経費がかなりかかってしまいます。そこで、奥行き3m足らずの細長い南側の庭に土を盛って、建物に向かった斜面をつくり、高低差のある変化に富んだ空間にしました。
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画像① 建物南側の庭に作った斜面 東側から西側を望む

ヒメシャラは、その斜面に前から生えていたように、それらしい場所を選んで移植しています。
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画像② ヒメシャラなどの自然風植栽 西側から東側を望む

また、玄関から入ると目の前に大きな窓があり、庭の風景を切り取って見ることができる、ピクチャ・ウィンドウとなっています。その風景作りに、古木で変化に富んだ樹形のアセビを配しました。
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画像③ 玄関正面のピクチャ・ウィンドウから見えるアセビ

以上の3枚の画像を見ても判るように、庭が完成したばかりの頃は、まだまだ寂しい感じでした。その後、植物の生長に従い、良いと思った場所に植えたものでも、消えてしまうものがあったり、施主の方の新たなご希望を取り入れたり…と少しずつ少しずつ改良してきました。庭をつくったときには充分対処できると考えていた水はけが予想外に悪く、土の中に暗渠排水管を埋めたりもしました。その部分には、つくば石のゴロタを自然な形で敷いて川の流れのようにしました。必然が生んだ新たな景色です。

そして冬を越え、春が過ぎて初夏の頃には緑たっぷりの庭になってきました。
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画像④ 画像①のその後 建物南側の庭 東側から西側を望む

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画像⑤ 画像②のその後 西側から東側を望む

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画像⑥ 画像③のその後 玄関正面のピクチャ・ウィンドウ
最近の気候の変化で、虫が大発生したり、普通なら葉焼けしない樹木が葉やけして汚くなったり、実がつかなかったり、逆に異常に殖える植物があったり、いろいろなことが起こります。それに一つずつ対処していると、もどかしいこともあると思うのですが、施主のかたはハプニングにも根気よくお付き合いくださいます。この庭を愛して、できることは小まめにしてくださるので、心地よい空間が保たれているのだと思います。庭は作ったその日から、辛抱と根気が求められるものなのかもしれません。それだけに上手くいくと喜びもひとしおです。

活かされなかったスペース?

住宅の敷地が狭くなってきたうえに、どうしても住居が重視されるため、最近では庭としての土のスペースを確保することが難しくなってきています。ですから、ほんの僅かでも、土があるということは、幸せなことです。

では、その僅かな土を充分活かしていますか?

ここは、都心から電車で10分くらいの住宅地です。道路からすぐに門扉が迫り、すぐまた急な階段を上りきると玄関があるというお宅です(写真①参照)。築20数年経っていて、その間に建物のリフォームもなさっています。

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門扉の手前、道路側の両サイドに60cm四方の植栽スペースがあり(写真②参照)、生育状態の悪い樹木が生えていて情けない姿でした。また、階段横の余った斜面には、そのまま斜めに土が入れられていただけでした。土が崩れ落ちるのを防ぐため、プラスチックの植木鉢を5、6個置いて土留めにしている状態でした。

このように「土はあるけれど、斜面になっていてどうしたらいいかわからない」というケースは、わりとあります。心当たりの方もいらっしゃると思います。大々的にリフォームをして、庭の部分も素敵に!とみなさんお考えなのですが、予算や工期の期間など考え合わせると尻込みされてしまいます。

でも、ちょっとした工夫でイメージは変えられます。

ここでは、入口の両側に1本ずつ植えてあった樹木のうち、瀕死の状態の片方は取り除きました。もう1本は思い出のある木ということでしたので、土壌改良をして植えなおしました。取り除いた跡には、施主のかたがつるバラを植えたいということでしたので、防腐処理済みの木材をモスグリーンに塗装したオリジナルのオベリスクを作り、そこにつるバラを絡ませるようにしました(写真②参照)。プランする側の本音としては、両サイドをつるバラのオベリスクにしたかったのですが・・・

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門扉を入ると、斜面の土です。入口の植栽スペースに作った花壇と同じピンコロ石を使って土留めを設け、棚田のように平らな部分を作りました。これで植物を植えられます。隣家の陰になるので、日陰の植物を中心にいろいろ楽しんで植えてあります(写真③参照)。

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階段の横の壁面と、階段を上がったところの壁面は汚れていて殺風景なので、オベリスクと同じ色のモスグリーンの横板を取り付けて色で統一感を出し、つる植物が絡むようにし、壁面を立体的に見せてアクセントをつけてみました。(写真①④参照)

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施主のかたも、タイルの階段を石に変えたい、手すりもアイアンの雰囲気のあるものにしたい等々、やりたいことは次から次に膨らんできます。でも、既存のものにプラスαの工夫で雰囲気を変えることはできます。「大リフォーム」そのときがやってくるまで、時の経過とともにお楽しみください。

都心の屋上で秋まき野菜を収穫

最近、食の安全性に対する疑問から、自分たちが食べる野菜を自ら育てようと、家庭菜園に関心を寄せる方々が増えているようです。ただ都市部では、じゅうぶんな広さの庭が確保できない、庭はあっても建物に囲まれていて環境がよくないなどの問題があります。そこで発想を変えて、照り返しの酷い屋上や吹きさらしのベランダを、陽当たりと風通しが良い菜園に変えることで、収穫の喜びを味わうことができます。

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上の写真は、都心のビルの屋上で今年の10月4日に野菜のタネまきをした様子です。土は、屋上用に開発された軽い培養土に、赤玉土とたい肥を混ぜたものです。赤玉土には強い風で苗が根こそぎ抜けないよう、適度の重さをもたせる役目が、たい肥には野菜を元気に育てるため、土の中の善玉の微生物を殖やす役目があります。

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タネまきしてから11日目、10月15日の状態です。生長にしたがって混んでいる芽を間引きながら育てます。抜いた芽は、ベビーリーフとしてサラダなどに使えます。もちろん無農薬なので、間引いた苗をそのまま口に入れても問題ありません。小さなビニルハウスのような覆いは、農業用の不織布を使っています。日光と風は通しますが、飛んでくる害虫は通さないので、殺虫剤を全く使用しないで育てられます。普段は閉めておき、水やりや世話のときだけ開くようにします。

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同じく25日目、10月29日の状態です。30本以上発芽した苗ですが、間引きを繰り返して5株まで減らしました。株がここまで大きくなれば、葉を多少害虫に囓られても生長に影響はないのと、冷え込む日も出てくると虫の活動も鈍くなるので、タネまきしてからずっと覆っていた虫除けの不織布を取り除きました。

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同じく48日目、11月21日の状態です。いちばん手前に植えたカブは、もう収穫の適期になりました。地面から切り離された屋上なので、株の根元を囓る害虫が入り込むこともなく、きれいな肌をした丸い形です。大きさは、テニスボールをひとまわり小さくしたくらいです。

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収穫したカブは、英国の種苗会社から取り寄せた「オアシス」という品種です。カタログには「メロンの風味がある」と書いてありましたが…甘味が強く、葉も柔らかくて瑞々しく、生でまるごと食べられるほどでした。となりは、一緒に収穫した「わさび菜」というカラシナの栽培品種で、葉に細かく切れ込みが入ります。このように、お店では手に入らない珍しい種類の野菜を、穫ったその場で味わうことができるのも家庭菜園ならではの愉しみのひとつです。

屋上やベランダに菜園を作るときの条件は、まず床が水を含んだ培養土の重さに耐えられる構造になっていること、つぎに建物の防水処理が適切に施されていること、そして水道の蛇口があることです。地面から切り離された高い場所で野菜を栽培するので、培養土の配合や、野菜の種類選びだけでなく、毎日の世話にも気配りは必要ですが、専門家と相談しながら希望に近い菜園を作ることができます。